♪♥ この教材は,高校数学の基本問題のうち,背理法の入試問題のバックアップおよびマイナーチェンジありのカバー版です. ♫♣ 元の教材が通信トラブルで読めないときや,元の教材がなくなってしまったとき(高齢者がいつまでも生きている訳ではない)などに,こちらを使ってください.なお,学習の記録は付いていません.
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イラストによる背理法の説明(1)
とで世界の全部です.
これ以外にはありません
条件とに対応する集合をとで表すとき,(全体集合)になります.
このとき,を証明したいが,からを直接証明するのが困難なとき,
行きたくない方の道に進んでみて,そちらに進めば世界が破滅してしまう(矛盾がある)ことを言う.この論法が背理法です. |
(おとぎばなしによる解説)
(実際の手順)地獄に行って,地獄を壊してしまうと天国だけが残ります・・・地獄に行かないと天国には行けません.
#~地獄を見たものにしか,天国なんて分かるはずはないのだ,クソ-負けてたまるか~#
と自分に言い聞かせると覚えやすい とを仮定して矛盾を示す.(も仮定することを忘れないように) かつ →(数学的常識に反すること:1+1=1など)
かつ |
イラストによる背理法の説明(2)
論理的な関係(pならばq)は,集合ではに対応します.言い換えれば,集合の関係としてとなっていることを示せば,の証明になります. この証明は,集合P, Qの関係が一般のゆるい関係,すなわちP独自の部分,Q独自の部分,P, Qの共通部分から成り立っているのではなく, が空集合になることを言えばよい.(右図の×印の部分が空集合になることを言う). そうすると「P:卵の黄身」は「Q:卵の白身」の中にある部分だけから成り立っていることになり,が言える. |
が空集合になること(左図の×の部分には何もないこと)を示すには
「Pであって」かつ「である」ものが存在すると仮定すると,矛盾を生じることを示せばよい.
すなわち
何かある要素xが,かつを満たすとすると具合の悪いことが起こることを示せばよい.
【要約】<背理法とは>
とを仮定して矛盾を示し,これによりを証明する方法
※も仮定することが重要.この点が対偶証明法と異なり,結論としてが導ける場合に限られず,他の内容でも数学的に矛盾することが示せたら何でもよいので,自由度が大きい.
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【例題1】
(解答)は無理数であることを示せ. が有理数であると仮定して矛盾を示す. (m, nは整数で互いに素)…(1) と仮定すると …(2) (2)において,左辺は2の倍数
もしも,nが奇数なら,n2は奇数となって,等式が成り立たないから,nは偶数でなければならない
n=2k(kは整数)…(3)とおくと,(2)より 2m2=4k2 m2=2k2…(4) (4)において,右辺は2の倍数
もしも,mが奇数なら,m2は奇数となって,等式が成り立たないから,mは偶数でなければならない
m=2l(lは整数)…(5)とおくと,(3)と(5)はm, nは整数で互いに素という仮定に反するから矛盾. よって,が有理数であるという仮定は間違いであることが示されたから,は無理数…(証明終) |
この証明の流れは,以下の問題において基本となるものなので,記憶に留めておくとよい.
特に,(1)において一見些末(さまつ)な話に聞こえる「互いに素」という「勝手な,ついでの話のような仮定」が設定してあって,それと矛盾することが証明の鍵となっているのだから,高校生が読んだら初めは違和感を持つかもしれません. ただし,整数÷整数の分数で書けるものは,約分できるだけ約分して既約分数にしておけるはずだから,無理な仮定ではない. ※この証明は昔から有名な由緒ある証明で,高校生としては,まず 「♪~そんな形の矛盾でもよいのか~♣♬」 |
【問題1.1】
参考答案を見る参考答案を隠すは無理数であることを証明せよ.
(解答)
が有理数であると仮定して矛盾を示す. (m, nは整数で互いに素)…(1) と仮定すると …(2) (2)において,左辺は2の倍数
もしも,nが奇数なら,n3は奇数となって,等式が成り立たないから,nは偶数でなければならない
n=2k(kは整数)…(3)とおくと,(2)より 2m3=8k3 m3=4k3…(4) (4)において,右辺は2の倍数
もしも,mが奇数なら,m2は奇数となって,等式が成り立たないから,mは偶数でなければならない
m=2l(lは整数)…(5)とおくと,(3)と(5)はm, nは整数で互いに素という仮定に反するから矛盾. よって,が有理数であるという仮定は間違いであることが示されたから,は無理数…(証明終) |
【問題1.2】
参考答案を見る参考答案を隠す素数に対して,は無理数であることを示せ.
(解答) が有理数であると仮定して矛盾を示す. (m, nは整数で互いに素)…(1) と仮定すると …(2) (2)において,左辺はpの倍数
もしも,nがpの倍数でなければ,n2はpの倍数でなく,等式が成り立たないから,nはpの倍数でなければならない…(*)
n=pk(kは整数)…(3)とおくと,(2)より pm2=p2k2 m2=pk2…(4) (4)において,右辺はpの倍数
もしも,mがpの倍数でなければ,m2はpの倍数でなく,等式が成り立たないから,mはpの倍数でなければならない…(**)
m=pl(lは整数)…(5)とおくと,(3)と(5)はm, nは整数で互いに素という仮定に反するから矛盾. よって,が有理数であるという仮定は間違いであることが示されたから,は無理数…(証明終) ※上記の答案で(*)(**)の部分は,書いてある内容に間違いはないが,証明としてやや甘いと判断される場合がある.もう少し詳しく書くと次のようになる.
もしも,nがpの倍数でなければ,
以上により,(*)が成り立つ.(**)も同様
n=pk+r (0<r<p) とおける. このとき n2=(pk+r)2=p2k2+2pkr+r2 =Np+r2 (Nは整数) がpの倍数であれば,r2がpの倍数であることになる. ところが,pは素数であるから,pよりも小さな整数r (0<r<p)の積 r2はpの倍数にはならない. |
【問題1.3】
参考答案を見る参考答案を隠すが素数であるとき は整数でないことを示せ.
(解答) (は整数)と仮定する 両辺にを掛けると と右辺のは整数になるが,左辺のは整数にならない. 結局,左辺は整数でなく,右辺は整数になるから,矛盾 したがって,が整数という仮定が間違っており,整数ではない |
【問題1.4】
参考答案を見る参考答案を隠すが素数であるとき は無理数であることを示せ.
(解答) が有理数であると仮定して矛盾を示す. (m, nは整数で互いに素)…(1) と仮定すると 両辺をm乗すると 右辺は2と5の倍数であるが,左辺のpは素数だから,2×5の倍数ではない.矛盾 したがって,は無理数 |
【例題2】
(解答)が無理数であることを用いて,次のことを証明せよ.
を有理数とするとき,ならば,になる.
のときにまたはであれば矛盾が生じることを示す.
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のとき ならば となるが,有理数の商は有理数であるから,有理数である右辺が無理数である左辺と等しいことになり,矛盾 よって,が成り立つ にを代入するとになる 以上により,が成り立つ |
【問題2.1】
参考答案を見る参考答案を隠す以下の問いに答えよ.ただし,が無理数であることは使ってよい. (1) 有理数について,ならば,であることを示せ.
(解答) の各辺を2乗すると ならば 有理数は四則演算について閉じているから,右辺は有理数.左辺は無理数であるから,矛盾 したがって,でなければならない. (ア) のとき の両辺にを掛けると ならば 右辺は有理数,左辺は無理数となって,矛盾 したがって,でなければならない. このとき,より, 以上から, (イ) のとき だから, ならば 右辺は有理数で,左辺は無理数だから矛盾 よって,でなければならない. このとき,より, (イ)の分類を満たすは存在しない. |
【問題2.2】
参考答案を見る参考答案を隠す正の整数について (1) が既約分数ならば,も既約分数であることを示せ. (2) が既約分数であるならば,も既約分数であることを示せ.
(解答) (1) は互いに素でないと仮定し,これらの最大公約数をとおくと (は正の整数) このとき の分母分子は共通因数をもつことになるから,仮定に反する. したがって,は互いに素 (2) が既約分数でないと仮定し,分母分子の最大公約数をとおくと …(i) …(ii)(は正の整数) と書ける. (i)(ii)の連立方程式を解くと,となって,が共通因数をもつことになるから,仮定に反する. したがって,は既約分数 |
【問題2.3】
参考答案を見る参考答案を隠すが正の整数であるとき,は無理数になることを示せ.
(解答) が有理数であると仮定すると (は正の整数で,互いに素) とおける. 両辺を2乗すると 左辺は整数だから,右辺が整数になるには …(1) また,原式から だから,は整数ではない.…(2) (1)(2)は矛盾しているから,が有理数であるという仮定が間違っている. ゆえに,は無理数 |
【問題2.4】
参考答案を見る参考答案を隠すを1以上の整数とするとき,次の2つの命題はそれぞれ正しいか.正しいときは証明し,正しくないときはその理由を述べよ.
命題:
あるに対して,とは共に有理数である.
命題:
すべてのに対して,は無理数である.
(解答) あるに対して,とは共に有理数であると仮定すると,有理数の積は有理数だから (は正の整数で互いに素) とおける.この両辺を2乗すると 左辺は整数だから,右辺も整数になるためには…(1) ところで であるから,は整数でない…(2) (1)(2)は矛盾であるから,命題は正しくない. 命題の否定:「あるに対して,は有理数である.」と仮定すると (は正の整数で互いに素) とおける.この両辺を2乗すると となって,右辺は有理数になるが,前半の命題で証明したように,左辺は無理数になる.これは矛盾であるから,命題の否定は正しくない. したがって,命題は正しい.
※理論上はp:真,p:偽,q:真,q:偽の4通りあるはずなのに,なぜ,迷わずに上記のような答案に絞り込めるのか.
⇒ 有理数と無理数が登場する証明問題では,だいたい次のように見当を付けることができます. 「有理数であると仮定」して,いろいろと変形していくうちに矛盾を見つけて,押出しでアウトにして,背理法により「無理数という結論」を出す. もし,無理数であると仮定して,いろいろと変形していくうちに矛盾を見つけようとすると,なかなか難しいのです. というのは,有理数は和差積商について閉じていて,有理数の中でいろいろな変形ができますが,無理数は和差積商のいずれについても閉じているとは言えません.(例えば,無理数+無理数や無理数×無理数が無理数になるとは限りません).このようにして,有理数が「演算についての美味しい所を皆持って行っている」ので「無理数は美味しくない残り物の集まりになっている」と見ることもできます. そんな訳で,有理数の中で変形して,押出しアウトの形の議論にする方が証明を進めやすいといえるので,「有理数であると仮定する」ことからスタートするのです. |
【問題2.5】
参考答案を見る参考答案を隠すnを1以上の整数とするとき,次の問いに答えよ. (1) が有理数ならば,は整数であることを示せ. (2) とが共に有理数であるようなnは存在しないことを示せ. (3) は無理数であることを示せ.
(解答)
(1) ***むずかしい*** (は正の整数で互いに素)とおくと,でなければならないことを示す. の両辺を2乗すると ここで,仮定によりは正の整数で互いに素だから,ならば右辺がで割り切れなくなり,矛盾を生じる.よって, でなければならない. したがって,は整数 (2)
(1)の結果を使えば,次のように示せる.
(1)の結果を使えば,とが共に有理数であるならば,共に整数になるから(1)の答案が不完全である受験生が,(1)の結果を使った答案を書いたときに"つじつまが合わないだろう!"などと減点されるような採点法は「ないと思う」・・・そのような採点は複雑になり過ぎるから! は矛盾になる.なぜなら, が言えるから,1つの整数とその次の整数の間に他の整数があることになり,矛盾 (3)
(2)の結果を使えば,次のように示せる.
(2)の結果から,とが共に有理数ということはない.そこで,(は正の整数で互いに素)が有理数であると仮定すると となって, ア) との一方だけが有理数であれば他方も有理数になる.これは矛盾であるから,が有理数であるという仮定は間違いになる. イ) との両方とも無理数である場合 となって,が無理数という仮定に反する.これは矛盾であるから,との両方とも無理数である場合は,は無理数になる. |
【例題3】
(解答)a, b, cを自然数とする. (3) abc, ab+bc+ca, a+b+cがすべて偶数ならば,a, b, cはすべて偶数であることを示せ. (3) x3−(a+b+c)x2+(ab+bc+ca)x−abc=(x−a)(x−b)(x−c)であるから x3−(a+b+c)x2+(ab+bc+ca)x−abc=0の解は,x=a, b, c そこで,abc, ab+bc+ca, a+b+cがすべて偶数ならば, x3=(a+b+c)x2−(ab+bc+ca)x+abcの右辺は偶数になる. xが奇数ならばx3も奇数になるから,この式は成り立たない. よって,xは偶数.したがって,a, b, cはすべて偶数である.
(別解)
a, b, cのうち1つだけが奇数と仮定する.(問題文はa, b, cの対称式だからaが奇数としても一般性を失わない.以下においても同様) このとき,a+b+cは奇数+偶数+偶数=奇数となって,仮定に反するから,1つだけが奇数ということはない. 次に,a, b, cのうち2つだけが奇数と仮定する.問題文はa, b, cの対称式だからa, bが奇数としても一般性を失わない. このとき,ab+bc+ca=ab+(a+b)cは奇数+偶数=奇数となって,仮定に反するから,2つだけが奇数ということはない. 最後に,a, b, cの全部が奇数と仮定する. このとき,abcは奇数となって,仮定に反するから,3つが奇数ということはない. 以上により,a, b, cはすべて偶数である. |
【問題3.1】
参考答案を見る参考答案を隠すa, b, cを自然数とする. (2) abc, ab+bc+ca, a+b+cがすべて3の倍数ならば,a, b, cはすべて3の倍数であることを示せ.
(解答)
(2) x3−(a+b+c)x2+(ab+bc+ca)x−abc=(x−a)(x−b)(x−c)であるから x3−(a+b+c)x2+(ab+bc+ca)x−abc=0の解は,x=a, b, c そこで,abc, ab+bc+ca, a+b+cがすべて3の倍数ならば, x3=(a+b+c)x2−(ab+bc+ca)x+abcの右辺は3の倍数になる. ア) x=3k+1(kは整数)ならば x3=(3k)3+3(3k)2+3(3k)+1=3N+1は,3の倍数でないから,この式は成り立たない. イ) x=3k−1(kは整数)ならば x3=(3k)3−3(3k)2+3(3k)−1=3N−1は,3の倍数でないから,この式は成り立たない. よって,xは3の倍数.したがって,a, b, cはすべて3の倍数である. |
参考答案を見る参考答案を隠す
(別解)
ア) a, b, cのうち1つだけが3の倍数と仮定する.(問題文はa, b, cの対称式だからaが3の倍数としても一般性を失わない.以下においても同様) このとき,a=3k, b=3l±1, c=3m±1ならばab+bc+ca=a(b+c)+bc=3M+3N±1となって,仮定に反する. イ) a, b, cのうち2つだけが3の倍数と仮定する.(問題文はa, b, cの対称式だからa, bが3の倍数としても一般性を失わない.) このとき,a=3k, b=3l, c=3m±1ならばa+b+c=3N±1となって,仮定に反する. ウ) a, b, cのうち3つとも3の倍数でないと仮定する. このとき,a=3k±1, b=3l±1, c=3m±1ならばabc=3N±1となって,仮定に反する. 以上から,a, b, cはすべて3の倍数である. |
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