♪♥ この教材は,高校数学の基本問題のうち,対偶証明法と背理法のバックアップおよびマイナーチェンジありのカバー版です. ♫♣ 元の教材が通信トラブルで読めないときや,元の教材がなくなってしまったとき(高齢者がいつまでも生きている訳ではない)などに,こちらを使ってください.なお,学習の記録は付いていません.
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**** 1 対偶証明法 **** ■ 条件pを満たすものの全体を集合Pで,条件qを満たすもの全体を集合Qで表わすとき,命題「p→q」は,P⊂Qに対応します. p,qあるいはp(x), q(x)が条件であるとき,この条件が成り立つかどうかはxの値しだいです. 例 条件x>1をp(x)で表わすとき,x=2ならばp(x)は真ですが,x=0ならばp(x)は偽です. このように,条件については(どんなxについても成り立つ[あるいは成り立たない]ような特別なものを除いて),それ自体の真偽を問うことはまれです--条件は命題と異なり,真偽が定まるとは限りません.条件を満たすものの集合を考えるだけです. |
これに対して,「すべてのxに対して,p(x)が成り立つ」「あるxについて,p(x)が成り立つ」という主張・判断は,正しいか間違っているかが定まる命題となります.一般に,条件p(x)に対して,「すべてのxについて」あるいは「あるxについて」という述語を付けたものは命題になります. 例 すべてのxについて,x>1 は,x=0, −1などで成立しないので偽の命題です. 例 (文字を実数の範囲で考えるものとするとき) すべてのxについて,x2+1>0 は,真の命題です.(どんな実数xについても成立するからです.) あるxについて,x2+2x+2<0 は,偽の命題です.(この不等式には解がないからです.)
【重要】
そこで,ところで,一般に 「p(x)→q(x)」 は 「すべてのxについて,p(x)→q(x)」 が省略されたものと決められています. 「p(x)→q(x)」 は 「すべてのxについて,p(x)→q(x)」 の省略だから,命題です. (真か偽かのいずれかに決まります) |
■ p→qが成り立つとき,すなわちP⊂Qのとき, Q⊂Pだからq→pです. 逆に,q→pが成り立つとき,すなわちQ⊂Pのとき,P⊂Qだからp→qです. 一般に,p→qとq→pの真偽は一致します. そこで,p→qを証明したいときに,直接示すのが困難な場合,q→pを示せばよいことになります.
<対偶証明法>
q→pを証明することにより,p→qを間接的に証明する方法
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■ 対偶証明法の例 例1
x+y+z≧0のとき,x, y, zの少なくとも1つは0以上であることを証明しなさい.
(答案)
対偶が真であるから,元の命題も真である.
nが自然数を表わすとき,n2が奇数ならば,nは奇数であることを証明しなさい.
(答案)
n=2k(偶数)と仮定すると,n2=4k2=2(2k2)は偶数になる.
例3
よって対偶により示された.
既約分数の分母・分子のどちらかは奇数であることを示しなさい.
(答案)
既約分数において,m, nともに偶数と仮定すると,分母・分子は2で約分できることになり,既約分数でなくなる。
例4
よって,対偶により示された。 (※Not「少なくとも一方が奇数である」=「両方とも偶数である」)
m, n自然数とするとき,が既約分数であるならば,も既約分数であることを証明しなさい.
(答案)m, nが互いに素でないと仮定すると,m=km’, n=kn’(kは2以上の整数)とおける. このとき, はkで約分できる.よって対偶により示された. ※ 我々の思考は,「個々の要素についての条件」から,「複合的な条件」の成否を判断する方が自然なので, 「複合的な条件」から「個々の要素についての条件」を証明するような問題は,対偶で考えると分かりやすくなります. |
《問題》 ≪1≫ x+y≧2ならばx, yのうち少なくとも1つは1以上であることを証明しなさい. (ア,イに入る語句を右欄から選んでクリックしなさい.選択すれば採点結果と解説が出ます.見ているだけでは解説は出ません.) |
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(答案) x, yの[ ア ]ならば[ イ ]となる. よって対偶により示された. 解説を見る |
[ ア ]
[ イ ] |
≪2≫
整数m, nについて,mnが奇数ならば,m, nはともに奇数であることを証明しなさい. |
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(答案)
m, nの[ ア ]ならば[ イ ]となる. よって対偶により示された. 解説を見る |
[ ア ]
[ イ ] |
≪3≫
x2+y2≦1ならばx≦1であることを証明しなさい. |
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(答案)
y2≧0だから,[ ア ]ならば[ イ ]となる. よって対偶により示された. 解説を見る |
[ ア ]
[ イ ] |
**** 2 背理法 ****
■ 背理法と対偶証明法は別のものです.背理法の一部に対偶証明法を用いることもありますが,そのような場合だけではありません. ■ イラストによる背理法の説明 ■ qとqで世界の全部です. 行きたくない方の道qに進んでみて,そちらに進めば世界が破滅してしまう(矛盾がある)ことを言う. (おとぎばなしによる解説) 地獄に行って,地獄を壊してしまうと天国だけが残ります・・・地獄に行かないと天国には行けません.)
#~地獄を見たものにしか,天国なんて分かるはずはないのだ,クソ-負けてたまるか~#
pとqを仮定して矛盾を示す.と自分に言い聞かせると覚えやすい
p
という形でpとpが矛盾という構造でもよい.(一部に対偶証明法q→pを用いる)
q→p
p
という構造でもよい.
q→(数学的常識に反すること:1+1=1など) |
■イラストによる背理法の説明(2) 論理的な関係(pならばq)は,集合ではに対応します. 言い換えれば,集合の関係としてとなっていることを示せば,の証明になります. この証明は,集合P, Qの関係が一般のゆるい関係,すなわちP独自の部分,Q独自の部分,P, Qの共通部分から成り立っているのではなく, が空集合になることを言えばよい.(右図の×印の部分が空集合になることを言う). そうすると「P:卵の黄身」は「Q:卵の白身」の中にある部分だけから成り立っていることになり,が言える. が空集合になること(右図の×の部分には何もないこと)を示すには,「Pであって」かつ「である」ものが存在すると仮定すると,矛盾を生じることを示せばよい. 何かある要素xが,かつを満たすとすると具合の悪いことが起こることを示せばよい.
<背理法>
pとqを仮定して矛盾を示す方法 ※pを仮定することが重要.この点が対偶証明法と異なり,結論としてpが導ける場合に限られず,他の内容でも数学的に矛盾することが示せたら何でもよいので,自由度が大きい. ■ 背理法の例 例1
自然数a, b, cについて,a2+b2=c2が成り立つとき,a, b, cのうち少なくとも1つは偶数であることを証明しなさい.
(答案)
例2
a2+b2=c2・・・(1) a, b, cは奇数・・・(2) と仮定する. (2)よりa2+b2は奇数+奇数で偶数となり,c2は奇数・・・(3) (3)は(1)と矛盾する. ゆえに,a, b, cのうち少なくとも1つは偶数である.
が無理数であることを用いて,が無理数であることを証明しなさい.
(答案)
例3
(m, nは整数)と仮定する. 両辺を2乗すると となるが,左辺は無理数,右辺は有理数なので矛盾. ゆえに,は無理数
△ABCにおいて,
a<bならば∠A<∠B・・・(1) a=bならば∠A=∠B・・・(2) a>bならば∠A>∠B・・・(3) が成り立つ.これらを用いて,(1)(2)(3)の逆が成り立つことを証明しなさい.
(答案)
∠A<∠Bのとき, a=bと仮定すると(2)により∠A=∠B.これは∠A<∠Bと矛盾する. a>bと仮定すると(3)により∠A>∠B.これは∠A<∠Bと矛盾する. 以上により,∠A<∠Bならばa<b (2)(3)の逆も同様にして示される.
背理法の一種の「転換法」と呼ばれる方法です.転換法は(1)(2)・・・の仮定側がすべての場合を尽くしていて,(1)(2)・・・の結論側に共通部分がなければいつでも使える.
例4
【転換法の他の例1】
実係数の2次方程式ax2+bx+c=0 (a≠0)・・・(#1)の判別式をD=b2−4acとすると • D>0ならば(#1)は異なる2つの実数解をもつ・・・(#2) • D=0ならば(#1)は実数の重解をもつ・・・(#3) • D<0ならば(#1)は異なる2つの虚数解をもつ・・・(#4)
(#2)(#3)(#4)の仮定はすべての場合を尽くしており,結論に共通部分がないから,転換法により(#2)(#3)(#4)の逆が証明できる
【転換法の他の例2】
円の中心とある直線の距離をdとし,円の半径をrとすると • d<rならば円と直線は異なる2点で交わる・・・(#1) • d=rならば円と直線は1点で接する・・・(#2) • d>rならば円と直線は共有点を持たない・・・(#3)
(#1)(#2)(#3)の仮定はすべての場合を尽くしており,結論に共通部分がないから,転換法により(#1)(#2)(#3)の逆が証明できる
【転換法の他の例3】
△ABCの3辺の長さをa, b, cとするとき • b2+c2>a2ならば∠A<90°・・・(#1) • b2+c2=a2ならば∠A=90°・・・(#2) • b2+c2<a2ならば∠A>90°・・・(#3)
(#1)(#2)(#3)の仮定はすべての場合を尽くしており,結論に共通部分がないから,転換法により(#1)(#2)(#3)の逆が証明できる
素数は無限個あることを証明しなさい.
(答案)
素数は有限個(n個)だけあると仮定し,これらをp1, p2, p3, .. , pnとおく このとき,p1p2p3・・・pn+1はp1, p2, p3, .. , pnのいずれでも割り切れない(1余る)から素数である. これは矛盾であるから,素数は無限個ある.(ユークリッドの証明)
(注:とても難しい話)
例5
この式を利用して,素数を求めることはできない. 例えば,素数の小さいほうから順にp1=2, p2=3, p3=5, p4=7, p5=11, p6=13, p7=17, p8=19, ・・・とおくと 2×3+1=7は素数 2×3×5+1=31は素数 2×3×5×7+1=211:素数 2×3×5×7×11+1=2311は素数 2×3×5×7×11×13+1=59×509は素数でない 2×3×5×7×11×13×17+1=19×97×277は素数でない 2×3×5×7×11×13×17×19+1=347×27953は素数でない その他,ほとんど素数でなく,2×3×5×7×11×13×17×19×23×29×31+1=が珍しく素数になる程度.(100以下では,他に・・・61,・・・97だけのようである) このことは,ユークリッド原論に書かれている上記の証明が間違っているということではない.そもそも, 「素数は有限個 →p1p2p3・・・pn+1は素数」 は成り立つが,実際には素数は無限個あるのだから,その裏 「素数は無限個 →p1p2p3・・・pn+1は素数でない」 の真偽は定まらない.(詳しく言うと,すべての素数の積p1p2p3・・・pnは,無限個の積になるから1つの値に定まらない.ここでは,適当に選んだ有限の値nに対して,p1p2p3・・・pn+1を計算したら) 上記の実例から分かるように「p1, p2, p3, .. , pn以外の素数で割り切れる場合がある」 だから,ユークリッドの証明は正しいが,この証明に用いた途中式を素数を生み出す式として利用することはできない.
は無理数であることを証明しなさい.
(答案)
が有理数であると仮定し,とおく. (ここに,m, nは整数で互いに素)
※この証明を見て,「m, nは互いに素」などという根本的には重要でなさそうな仮定と矛盾するということによって証明を行っていることについて,普通の感覚の高校生なら,なんとなく割り切れない印象を持つかもしれない.(些細なことに言いがかりを付けて,話全体を否定しようとしているように見える)
両辺を2乗すると
しかし,この証明は昔から有名な由緒ある証明で,高校生としては,まず 「♪~そんな形の矛盾でもよいのか~♣♬」 ⇒ころんでもタダでは起きない"したたかさ"が重要 2m2=n2 よって,nは2の倍数・・・(1) n=2kとおく 2m2=4k2 m2=2k2 よって,nは2の倍数・・・(2) (1)(2)はm, nが互いに素という仮定に反し,矛盾. ゆえに,は無理数 |
《問題》
≪1≫ 21人を4組に分けたとき,どの組かは必ず6人以上になることを証明しなさい. (ア,イ,ウに入る語句を右欄から選びなさい.) |
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(答案)
21人を4組に分けたとする・・・(1) どの組も[ ア ]以下で4組あると仮定する・・・(2) (2)より合計[ イ ]以下となる.・・・(3) (3)は(1)と矛盾するから,[ ウ ] 解説を見る |
[ ア ]
[ イ ] 24人 25人 [ ウ ] 全部で5組以上 どこかの組は5人以上 すべての組は5人以上 どこかの組は6人以上 すべての組は6人以上 |
≪2≫
自然数a, b, cについて,a2+b2=c2が成り立つとき,a, b, cのうち少なくとも1つは3の倍数であることを証明しなさい. |
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(答案)
a, b, cのいずれも[ ア ]と仮定する.・・・(1) ところで (3k)2=3(3k2) (3k+1)2=3(3k2+2k)+1 (3k+2)2=3(3k2+4k+1)+1 だから,(1)のとき c2は[ イ ] a2+b2は[ ウ ] これらが等しいことは矛盾であるから, a, b, cのうち少なくとも1つは3の倍数である. 解説を見る
a, b, cのいずれも3の倍数でないと仮定する.・・・(1)
ところで,(3k)2=3(3k2),(3k+1)2=3(3k2+2k)+1, (3k+2)2=3(3k2+4k+1)+1だから,(1)のとき, c2は3で割ると1余る, a2+b2は3で割ると2余る.これらが等しいことは矛盾であるから,a, b, cのうち少なくとも1つは3の倍数である. |
[ ア ]
3の倍数でない [ イ ] 3で割ると2余る [ ウ ] 3で割ると1余る 3で割ると2余る |
≪3≫
が無理数であることを用いて,が無理数であることを証明しなさい. |
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(答案)
が[ ア ]であると仮定する.・・・(1) (rは[ ア ])とおくと となる.・・・(2) (2)の左辺は[ イ ],右辺は[ ウ ] これは矛盾であるから,は無理数である. 解説を見る
(rは有理数)とおくと,となる.(2)の左辺は無理数,右辺は有理数.これは矛盾であるから,は無理数である.
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[ ア ]
無理数 [ イ ] 無理数 [ ウ ] 無理数 |
**上記【転換法の他の例2】の再掲** ≪4≫ 点Cを中心とする半径Rの円と直線Lがあって,点CからLにひいた垂線の長さをdとするとき, • d<RならばLは円と2点で交わる・・・(1) • d=RならばLは円と1点で接する・・・(2) • d>RならばLは円と共有点を持たない・・・(3) これらを用いて,(1)(2)(3)の逆をそれぞれ証明しなさい. |
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(答案)
Lは円と2点で交わるとき,・・・(*) • d=RならばLは円と[ ア ].これは(*)と矛盾する. • d>RならばLは円と[ イ ].これは(*)と矛盾する. ゆえに,Lが円と2点で交わるとき,[ ウ ]. (2)(3)の逆も同様にして示される. 解説を見る
Lは円と2点で交わるとき,・・・(*)
• d=RならばLは円と1点で接する.これは(*)と矛盾する. • d>RならばLは円と共有点を持たない.これは(*)と矛盾する. ゆえに,Lが円と2点で交わるとき,d<R. (2)(3)の逆も同様にして示される. |
[ ア ]
1点で接する 共有点を持たない [ イ ] 1点で接する 共有点を持たない d=R d>R |
≪5≫
nが2以上の整数であるとき,は無理数となることを証明しなさい. |
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(答案) すなわち だから,は[ ア ]ではない.・・・(1) が[ イ ]であると仮定する・・・(2) (1)(2)より とおくと (p, qは正の整数で互いに素,p≠1)・・・(3) 辺々2乗すると 左辺は[ ウ ]で,右辺は(3)により[ ウ ]でない. これは矛盾であるから,は無理数 解説を見る
だから,は整数ではない.・・・(1)
が有理数であると仮定する・・・(2) (1)(2)より とおくと (p, qは正の整数で互いに素,p≠1)・・・(3) 辺々2乗すると 左辺は整数で,右辺は(3)により整数でない. これは矛盾であるから,は無理数 |
[ ア ]
有理数 無理数 [ イ ] 有理数 無理数 有理数 無理数 |
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