♪♥ この教材は,高校数学の基本問題のうち,必要条件と十分条件(等式の問題)のバックアップおよびマイナーチェンジありのカバー版です. ♫♣ 元の教材が通信トラブルで読めないときや,元の教材がなくなってしまったとき(高齢者がいつまでも生きている訳ではない)などに,こちらを使ってください.なお,学習の記録は付いていません.
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■ 数学で用いられる「必要条件」「十分条件」という用語は,日常生活で用いられる『必要』『十分』とは異なるものです.
日常生活では,『昼食を食べるには,500円は必要だ』『2000円あれば十分だ』というように,分量が足りる,足りないという意味に使うことが多いが,数学では,これとは全く違う使い方をする.
数学上の必要条件,十分条件は,pならばq(記号では,p→q)という関係が成り立つかどうかで決まります. pならばq が成り立つとき, 「qはpであるための必要条件」 ■ p→q と p←q の両方とも成り立つとき,
十分必要条件とはいいません.
■ p→q と p←q のどちらも成り立たないとき
pはqであるための必要条件でも十分条件でもありません. |
■ 2つの命題(1つの判断を述べた文章や式で,正しいか正しくないかが定まるものを命題といいます.)があるときに,一方が他方の必要条件あるいは十分条件といういい方をし,ある命題1つについてそれ自体で必要条件とか十分条件とかということはいえません.
[例1]
シェパード→犬,犬→動物 です. そこで,犬であることは,シェパードであるための必要条件です. また,犬であることは,動物であるための十分条件です. しかし,犬だけで,必要とか十分とかの議論はしません. [例2]
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■ 2つの命題が与えられたとき,一方が他方の何条件であるかを判断するには,矢印を2つ作ってみて,どちら向きの矢印が成立するかで考えます.正しい推論で一方から他方が得られるとき,その矢印は「成立」すると考えます.
図示できるときは,中に入っている方が十分条件です. |
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[例3]
「ma=mb は a=b であるための何条件ですか」という問題があるとき, という図を作り,どの矢印が成り立つかを調べます.(とにかく,矢印を2つ作ることが大切です.) ○ ma=mb → m(a-b)=0 → m=0またはa-b=0 [a=bに行くとは限らず,m=0に行くこともある] ○ a=b → ma=mb (両辺に同じ数を掛けても等しい), だから, 以上により,成り立っている矢印を見ると,ma=mbは,矢印の先なので,a=bであるための必要条件. ※ 上の説明において,「ma=mb → a-b=0」が成り立たないことは,1つの例 m=0,a=1,b=2 を示すだけで証明できます.このように,ある命題(主張)p→qが成り立たないことを示す例は「反例」と呼ばれます. ○ p→q の反例としては,「pが成り立ち」かつ「qが成り立たない」ものでなければなりません. ○ p→q は (すべての)「pについてqが成り立つ」の省略なので,「1つでもpであってかつqでないもの」があれば,p→qが間違っていることになります.しかし,「あるpについてqが成り立つ」ことを示しても他のpについてqが成り立つことは示せていないから,p→qが成立することの証明にはなりません. このように 例を幾つ示しても成り立つことの証明にはなりません. 反例を1つ示せば成り立たないことの証明になります. |
《問題》 次の( )に入る語句を右の選択肢の中から1つ選びなさい.クリックすれば採点結果が出ます.解説を読んでもよい.(問題文中の文字は,すべて実数とします.)
** このページでは,等式の問題を扱っています ** 《1》 x=1はx2+3x−4=0であるための( )条件 |
〇→
x=1をx2+3x−4に代入すると, 12+3×1−4=0が成り立つから は成り立つ 〇← 「少し考えて,証明できない『感じがする』から,成り立たないようだという『予想』を立てて」,反例を考える のとき,が成り立つが,は成り立たないから は成り立たない 〇⇄ 以上により, 〇答 x=1は,成り立つ側の矢印(右向き矢印)の |
《2》 (a=1かつb=1)はab=1であるための( )条件 |
〇→
(a=1かつb=1)をabに代入すると,1×1=1だから (a=1かつb=1) は成り立つ 〇← 「少し考えて,証明できない『感じがする』から,成り立たないようだという『予想』を立てて」,反例を考える のとき,であるが,(かつ)ではないから (a=1かつb=1) は成り立たない (反例は,他にもたくさんある:など) 〇⇄ 以上から,(a=1かつb=1) 〇答 (a=1かつb=1)は,成り立つ側の矢印(右向き)の |
《3》 a+b=2はa=b=1であるための( )条件 |
〇→
「少し考えて,証明できない『感じがする』から,成り立たないようだという『予想』を立てて」,反例を考える a=2, b=0のとき,a+b=2であるが,a=b=1ではないから a+b=2a=b=1 は成り立たない (反例は,他にもたくさんある:など) 〇← a=b=1をa+bに代入すると,1+1=2だから a=b=1a+b=2 は成り立つ 同じことであるが,が成り立つ 〇⇄ 以上から,a+b=2a=b=1 〇答 a+b=2は,成り立つ側の矢印(左向き)の矢先にあるから,a=b=1であるための「必要条件」 |
《4》 a=b=0は(a+b=0かつab=0)であるための( )条件 |
〇→
a=b=0をa+bに代入すると,0+0=0だから a=b=0a+b=0 は成り立つ また,a=b=0をabに代入すると,0×0=0だから a=b=0ab=0 も成り立つ よって,a=b=0(ab=0かつab=0) が成り立つ 〇← 連立方程式 を解く.(例えば,b=−aとしてbを消去すると,−a2=0よりa=0.b=−a=0.よって,a=b=0が解となる) 〇⇄ 以上から,a=b=0(a+b=0かつab=0) 〇答 a=b=0は,成り立つ側の矢印(両向き)の |
《5》 a=b=0はa2+b2=0であるための( )条件 |
〇→
a=b=0をa2+b2に代入すると,02+02=0だから a=b=0a2+b2=0 は成り立つ 〇← 実数aについてa2≧0がつねに成り立つ(等号成立はa=0のとき) 同様にして,実数bについてb2≧0がつねに成り立つ(等号成立はb=0のとき) よって,実数a, bについてa2+b2≧0がつねに成り立つ(等号成立はa=b=0のとき) したがって,a=b=0a2+b2=0 が成り立つ 〇⇄ 以上から,a=b=0a2+b2=0 〇答 a=b=0は,成り立つ側の矢印(両向き)の |
《6》 a=bはa+c=b+cであるための( )条件 |
〇→
a=bのとき,任意の実数cを両辺に加えても,等式は成り立つから a=ba+c=b+c は成り立つ 〇← a+c=b+cから任意の実数cを両辺から引いても,等式は成り立つから a=ba+c=b+c は成り立つ 〇⇄ 以上から,a=ba+c=b+c 〇答 a=bは,成り立つ側の矢印(両向き)の |
《7》 x2=9はx=3であるための( )条件 |
〇→
2次方程式 x2の解は,x=3またはx=−3となり,必ずしもx=3となる場合だけでなく,x=−3となる場合もある. したがって,x2=9ならばx=3とは言えない. x2=9x=3 は成り立たない 〇← x=3をx2に代入すると,32=9だから x2=9x=3 は成り立つ 〇⇄ 以上から,x2=9x=3 〇答 x2=9は,成り立つ側の矢印(左向き)の矢先にあるから,x=3であるための「必要条件」 |
《8》 (x−y)(y−z)=0はx=y=zであるための( )条件 |
〇→
(x−y)(y−z)=0のとき(x−y=0またはy−z=0)となるので, 例えば,x=1, y=1, z=2のように,x−y=0が成り立つがy−z=0は成り立たない場合もある. したがって,x=y=zとは限らない. (x−y)(y−z)=0x=y=z は成り立たない 〇← x=y=zならば(x−y=0かつy−z=0) だから(x−y)(y−z)=0が成り立つ (x−y)(y−z)=0x=y=z は成り立つ 〇⇄ 以上から,(x−y)(y−z)=0x=y=z 〇答 (x−y)(y−z)=0は,成り立つ側の矢印(左向き)の矢先にあるから,x=y=zであるための「必要条件」 |
《9》 整数nについて nが3の倍数であることは,nが6の倍数であるための( )条件 |
〇→
nが3の倍数であるとき,n=3,6,9,12,・・・のように6の倍数になっているものと6の倍数になっていないものとがあるから, nが6の倍数であるとは言えない. だから nが3の倍数nが6の倍数 は成り立たない 〇← nが6の倍数であるとき,n=6k=3(2k)(kは整数)と変形できるから,3の倍数であると言える. nが3の倍数nが6の倍数 は成り立つ 〇⇄ 以上から,nが3の倍数nが6の倍数 〇答 nが3の倍数であることは,成り立つ側の矢印(左向き)の矢先にあるから,nが6の倍数であるための「必要条件」 |
《10》 整数nについて nが3の倍数であることは,nが2の倍数であるための( )条件 |
〇→
nが3の倍数であるとき,n=3,6,9,12,・・・のように2の倍数になっているものと2の倍数になっていないものとがあるから, nが2の倍数であるとは言えない. だから nが3の倍数nが2の倍数 は成り立たない 〇← nが2の倍数であるとき,n=2,4,6,8,10,・・・のように3の倍数になっているものと3の倍数になっていないものとがあるから, nが3の倍数であるとは言えない. nが3の倍数nが2の倍数 は成り立たない 〇⇄ 以上から,nが3の倍数nが2の倍数 〇答 左右どちら向きの矢印も成り立たないから,nが3の倍数であることは,nが2の倍数であるための「必要条件」でもなく「十分条件」でもない |
《11》
整数nについて n2が奇数であることは,nが奇数であるための( )条件 |
〇→
n2が奇数であるときに ア) nが偶数ならば,n2も偶数となって,n2が奇数になれない イ) nが奇数ならば,n2も奇数になる よって,n2が奇数ならば,nは奇数と言える したがって n2が奇数nが奇数 は成り立つ 〇← nが奇数ならば,n=2k+1(kは整数)と書けるから,n2=(2k+1)2=4k2+4k+1=2(2k2+2k)+1も奇数になる したがって n2が奇数nが奇数 は成り立つ 〇⇄ 以上から,n2が奇数nが奇数 〇答 左右両方の向きの矢印が成り立つから,n2が奇数であることは,nが奇数であるための「必要十分条件」 |
《12》 整数nについて n2が3の倍数であることは,nが3の倍数であるための( )条件 |
〇→
n2が3の倍数であるときに,nが3の倍数でなければ ア) n=3k+1(kは整数)のとき n2=(3k+1)2=3(3k2+2k)+1は,3の倍数にならない イ) n=3k+2(kは整数)のとき n2=(3k+2)2=3(3k2+4k+1)+1は,3の倍数にならない アイ)いずれの場合も不適当だから,nは3の倍数でなければならない したがって n2が3の倍数nが3の倍数 が成り立つ 〇← nが3の倍数ならば,n=3k(kは整数)と書けるから,n2=9k2=3(3k2)も3の倍数になる したがって n2が3の倍数nが3の倍数 は成り立つ 〇⇄ 以上から,n2が3の倍数nが3の倍数 〇答 左右両方の向きの矢印が成り立つから,n2が3の倍数であることは,nが3の倍数であるための「必要十分条件」 |
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